酔った活弁士が語る夫婦の愛の形
新宿のどん底にいこうとしたが入れなかったため、
餃子が安くて美味い大陸へ。
2時間くらい食事をしていただろうか。
隣の席のおじさんの大きな声が気になりだす。
チラッと見るとおじさんが2人。
2人と言っても、一生懸命喋っているおじさんのお相手は、
ずっと席で眠りこけたまま。
大きい声のおじさんの熱弁が、ひとり空回りしている。
店も閉店間際になり、
声の大きなおじさんが、僕たちに話かけてきた。
まったく遠慮をすることなく頂戴する。
そこから、おじさんのおしゃべりのターゲットは僕たちに。
既にお酒がだいぶ回っているから、おじさんの話はループする。
だけど、なかなかどうして面白い話なのだ。
定年後、おじさんは活弁士をしているそうで、
メトロポリスなど様々な無声映画の活弁をおこなってきたようだ。
via Metropolis (Film) - TV Tropes
と、そこまではいいとして、このおじさん、
定年までは、日本各地を巡業をする役者か歌手をやっていたのだが、
若いころ地方で女性を抱いて毛ジラミをうつされたそうだ。
そして、奥さんにうつしてしまい・・。
「2人で互いの毛ジラミをとりあってさ~」
「お互い無言でねぇ・・」
(細かい状況は聞いていないけど、ひなびたタタミ部屋のイメージだ。)
おじさんはとても大切そうにこのエピソードを話す。
はっきり言って奥さんにとっては大大大迷惑な話だ。
おじさんは自分勝手だし、全然美談ではない。
が、おじさんがこのとき奥さんへの愛情を強くしたことは、
表情からとてもよく伝わるのだ。
しょうもない阿呆みたいな自分。
それを呆れ、もしかすると怒っているかもしれないが、
付き合ってくれる妻。
受け止めてくれる人のいる喜びと安心感。
それから44年間、現在にまで及ぶ結婚生活の土台は、
こういったときに築かれた信頼と愛情の積み重ねが支えているのだろう。
ちゃんと奥さんに愛情を伝えないとダメですよ!なんて話をして、
別々の帰路についた。
来年、Shall We ダンスの周防監督が活弁士を題材にした映画を撮るらしい。
活弁業界が盛り上がって、おじさんが奥さんにいいところ見せられるといいなと思う。