「ディープフェイク」はディストピアの入り口なのか。フェイクポルノから合成人格まで。
先ほど知ったが、ディープフェイクという技術があるらしい。AIをもちいて映像の顔を差し替える技術だそうだ。
↓はニコラス・ケイジの顔で遊んでる動画。
自分の顔が勝手に一人歩きするのだから、有名人というのはつくづく大変な仕事だ。
フェイク映像をつくるにしても、例えばトランプ大統領の顔で遊ぶのは本人もたいして気にしなそうだからいいけれど、フェイクポルノとなると話は別だ。
記憶が定かではないが、2000年初頭くらいにアイコラ画像というのがネットに出回っていた。裸の女性の画像で、顔がアイドルや人気女優に差し替えられたものだ。ディープフェイクはそれを映像でやってしまう。
アメリカではすでにフェイクポルノが盛んにつくられ、そしてそれを取り締まる動きもでてきている。有名人でフェイクポルノを作ることも下劣な行為だけど、それが一般人にも起きうるというのが、この技術の怖いところだろう。
身に覚えがないのに勝手にポルノ映像をつくられて、貶められるようなことも起きうる。特にティーンエイジの間で起きそうだ。なにせフェイクポルノなら童貞でも問題ないわけだから。告白を断ったら、翌日、自分のフェイクポルノが学校中で話題になっている・・。なんというディストピアだろうか..!
ところで、合成する顔の表情は製作者がコントロールできるのだろうか。元になる顔に合わせて顔情報を変化するのであれば、容易にフェイク映像をつくれそうだ。とはいえ、Photoshopを使えても全員がデザイナーになれないように、合成技術に長けた人間は、そのスキルをベースに稼ぐということも起こるかもしれない。
なにせ、フェイク映像といのはポルノだけにとどまらない、すべての領域においてフェ拡散していく汎用性のある技術だからだ。それが犯罪と結びつくことだって当然ありうる。映画『マイノリティ・リポート』はたしか偽証映像の話だったはずだ。冤罪を作り出すことにだってフェイク映像は一役買うことだろう。
どうも、ネガティブなイメージばかりが先行してしまうが、新しい可能性だってあるはずだ。僕がディープフェイクを知った記事には下記のように書かれていた。
世の中には売れたいけど売れなくて困っているアイドルの卵とか役者の卵とかが無数にいるので、そういう人たちに「フリー素材」として自分の姿形を提供して、「コンテンツ(中身)の面白さ」と「パッケージ(外見)の魅力」を分業できる日がくるかもしれない。
特に、外見で魅力的な人間は男女問わず数多いが、決定的に違うのはコンテンツだったりする。
要は「可愛いけど面白くない」場合は可愛さがよっぽど神がからないと売れない。当たり前である。それでも売れる上限はけっこう低いだろうと思われる。
「可愛くないけど面白い」はまだ売れる余地がある。
それでも、よっぽど面白くないとダメ、というのは当然だ。
そうすると「可愛くて面白い」が両立する人というのは世の中にはほとんど全くゼロに近い。
ということは、逆に考えて、「可愛くて面白い」人工人格を作り出すことが不可能かといえばそんなことはないはずだ。
Youtubeとかで自分の顔を晒すのはちょっと・・・という人でも、むしろ晒したいけど面白いことを考えつかない・・・という人でも、うまくパートナーを見つければ二人でひとつの人工人格を作ることが出来るかもしれない。
うーむ・・、リアリティがどんどん揺らいでいく話だ。
とはいえ、合成された人格というのは昔からある話でもある。確か『雨に唄えば』は、サイレント映画の時代が舞台になっていて、顔は綺麗だけど声がひどい女優の声を、ヒロインが声だけ代わりにやるというシーンがあった。劇中の物語にかぎらず、『マイ・フェア・レディ』のオードリー・ヘプバーンが歌うシーンは、別の歌手が歌ったものだ。
コンテンツ作りの分業という意味では、『キン肉マン』のゆでたまごは実は2人のユニットだ。だから、複数人で1つの人格をつくるというのは先進的なことではない。
それでも実写のユーチューバーが実は合成人格でしたとなると、やはり驚きは大きい。目で見ているものへの信頼というのがどんどん揺らいでいきそうだ。すぐには見分けがつかないようなディープフェイクはいつごろに登場するのだろうか。
個人的には、そのような技術が実際に出回る前にフェイク映像をテーマにした創作物をみてみたい。たとえば、自分の容姿をフリー素材として売り出した結果、思いがけない事件に巻き込まれていくサスペンス映画。あるいは、ヒロインが、自身の容姿があらゆるところで素材として使われるところを見つづけた結果、人格に変調をきたす映画でもいい。
こういう技術は、優れたストーリーテラーの作品を通して考えると、その技術がもつ射程を想像しやすい。だから早く誰かにつくってほしい。僕が知らないだけで意外と既にあるのかもしれないけれど。
■ディープフェイクについて知った記事
■フェイク動画とその対策事情がよくまとめられていて面白かった
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